『首の後ろ』が痛い原因は?痛みを予防する生活習慣と対処法

「パソコンで仕事をしていると首の後ろがズキズキ痛む…」「首が痛くてスマホを見るのがつらい」といったお悩みはありませんか?

首の後ろに生じる痛みには、日々の姿勢だけでなく、さまざまな原因が隠れていることがあります。今回は、首の後ろが痛む原因をはじめ、痛みを予防するために気を付けたい生活習慣、おすすめのエクササイズやストレッチなど、整形外科医・金岡恒治先生に伺った内容をもとにわかりやすく解説します。つらい首の痛みにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

監修医金岡恒治の写真

監修医:金岡  恒治(かねおか こうじ)

筑波大学整形外科講師を経て、2007年より早稲田大学にてスポーツ医学および運動療法の教育・研究に従事。体幹深部筋研究に基づく運動療法を用いた腰痛治療研究の第一人者。オリンピック帯同ドクターを長年務め、現在はスポーツ庁健康スポーツ部会委員などを務め中高齢者の運動器障害予防や健康寿命延長に尽力している。2021年10月から腰痛運動療法を提供する「コアトリム ステーション」にてセカンドオピニオン外来を担当。

※先生のご所属は記事掲載当時のものとなります。

この記事のポイント

● 首の構造と首の後ろが痛くなる主な原因を解説

● 首の後ろに痛みがある時の注意点と受診の目安

● 首の後ろの痛みを予防するための正しいエクササイズやストレッチ

首の構造

首の骨は頚椎(けいつい)と呼ばれ、7つの骨(椎骨)が積み重なって構成されています。頚椎は、背骨の中でも胸椎(胸の部分)や腰椎(腰の部分)に比べてあらゆる方向に可動域が大きいのが特徴です。

頚椎を構成する椎骨どうしは、関節、靭帯、椎間板でつながり、まっすぐ立った時は、緩やかに前に向かってカーブしています。頭の重みはこのカーブによって分散され、動作時の衝撃を和らげるサスペンションの役割を果たします。

首の構造1
首の構造2

直立二足歩行をする私たちは、体重の約8~10%を占める頭を頚椎のみで支えています。体重60kgの人であれば約5~6kgもある重い頭を、頚椎は1本柱として支えています。この不安定な構造を安定させるために、首まわりの筋肉や腱はとりわけ負担がかかりやすい部位と言えます。首はこのように絶妙な構造を持ち、繊細なバランスの上に成り立っているのです。

首の動きをセルフチェックしよう

「ゆっくりと」首を前後・左右に曲げたり、左右にひねったりして、どの動きで痛みやしびれが生じるか、可動域はどれくらいか、左右差や異常はないか確認してみましょう。自分で体を動かしながら弱点を知ることは、つらい症状を解消するための第一歩です。

1. 前曲げ(屈曲)・後ろ反り(伸展)

目安は前に45度、背中が丸まらないように意識しながら、首を前に曲げます。目安は後ろに45度、胴体が反らないように意識しながら、首を後ろに反ります。

2. 左曲げ・右曲げ(側屈)

目安は左に45度、右に45度 肩の水平を保ちながら、首を左右に曲げます。

3. 左ひねり・右ひねり(回旋)

左ひねり(回旋)目安は左に60度、右ひねり(回旋)右に60度 首を傾けないように左右にひねります。

4. 後ろ反り+左右ひねり(伸展+回旋)

目安は後ろに45度、左に60度、後ろに45度、右に60度

首の後ろが痛い原因

人間の首は5~6kgもの重い頭を支えながら前後左右に動き、椎骨をつなぐ椎間関節には常に大きな負担がかかります。負担が集中した椎間関節には微細な損傷が生じ、これを治そうとする体の反応で炎症が発生、痛みやしびれが現れます。首をひねって顔を左右に向けたり、首を反らせて顔を上に向けたりした時、首の内部から「シャリシャリ」という音が聞こえたことはないでしょうか。これは椎間関節にガタつきが生じて軟骨が傷んだ結果、関節の骨がこすれるようになって、その振動がシャリシャリ音として聞こえるのです。

首の後ろから背中にかけての筋肉にも、姿勢を保つために大きな負担がかかります。スマホを操作する時に取りがちな前かがみ姿勢では、首を前方に15度傾けるだけで、首には頭の重さの2倍の負担がかかってしまうのです。この前かがみの姿勢を長時間くり返し続ければ、この姿勢を支える首の後ろから背中にかけての筋肉は、こり固まって硬くなります。硬くなった筋肉が引き伸ばされて傷付くと、やはり炎症が起こり、痛みを発するようになります。

正しい首の動かし方

首の後ろが痛い原因はさまざまありますが、最近、首の後ろの慢性的な痛みには主要な根本原因があることがわかってきました。それは頚椎を支える頚長筋というインナーマッスルを働かせずに首を動かすことです。

頚長筋は、頚椎の前側を縦に長く繋ぐように一つ一つの骨に付いていて、その働きによって頚椎全体が一つの塊となって動くことができるようになります。もし頚長筋を働かせずに首を動かし続けると、最も動かされやすい下の方の椎間だけが動かされてしまいます。頚長筋をしっかり働かせれば、首を前後左右に動かす時も、ひねる時も、常に頚椎に寄り添うように動き、椎間関節にかかる負担を減らすことができます。

また、頚長筋の支えによって首の後ろから背中にかけてのアウターマッスルの過剰な負担も減らすことができるため、筋肉がこり固まって硬くなり、痛みが発生することを防ぐことができます。

慢性的な首の痛みやこりの原因にストレートネックがあげられることがあります。しかし、これは正確ではありません。頚長筋が正しく働かないと、頭が前に出た姿勢になりレントゲン検査でストレートネックが指摘されます。同時に頚長筋が正しく働かないことで頚椎や筋肉への負担によって肩こりや頚部痛を起こしてしまいます。つまり両者の原因は頚長筋のサボリによるものなのです。

肩こり、頚部痛を改善・予防する簡単なエクササイズ方法は次の記事をチェックしてください。

疾患(慢性的な症状から疾患に進展)

慢性的な首の後ろの痛みの根本原因を取り除かずに、一時的な対処を続けていると、いずれ専門的な治療が必要になる場合があります。

頚椎椎間板ヘルニア

背骨の間にはクッションの役割を担う椎間板という軟骨があります。加齢や過度の負担によって椎間板がつぶれて、椎間板の内部がはみ出た状態が頚椎椎間板ヘルニアです。MRIで特に症状のない中高齢者でも5~8割の人にはヘルニアを認めていて、加齢による自然な変化ですが、神経を圧迫すると症状を出します。

症状の程度によって異なりますが、保存療法で数週間~数か月かけて改善するケースもあります。一方で、しびれや筋力低下が強い場合、さらには手足の動きが悪くなった場合は手術が検討されることもあります。

頚椎症

椎間板がつぶれ、椎骨に負担がかかり続けると、骨に骨棘というトゲのようなものができます。このように頚椎が変形したものを頚椎症と言います。骨棘が神経を圧迫すると、手の指がしびれる、手に力が入りにくいといった神経の症状が出て来ます。

頚椎症のうち、頚椎の脊髄から枝分かれする神経根が圧迫されるのが頚椎症性神経根症です。神経根は腕や手につながっているため、腕・手の痛み・しびれの症状となって現れます。
また、脊髄が圧迫されるものを頚椎症性脊髄症と言い、手足がしびれたり、足がもつれたりします。頚椎症性脊髄症の場合、軽い転倒でも脊髄が損傷し、四肢の麻痺に至る恐れもあるので、症状が出たら、ただちに専門医の受診が必要です。

頚椎捻挫

自動車の追突事故などで体が前に押されて首が伸びた時に発生します。首の骨をつなぐ椎間関節が捻られて関節を痛めてしまった状態で、上を向いて左右を向くと痛みが出るのが特徴です。
こうやって痛めた首の痛みは多くの場合、自然に数日で治っていきます。

寝違え

寝違えは、起床時に首に痛みが出る状態です。その原因は筋肉の過緊張などといわれていたものの、はっきりしていませんでした。しかし最近は、寝違えの症状も頚椎の椎間関節の障害で起こることがわかってきました。椎間関節にある「滑膜ヒダ」が就寝中にめくれて関節にはさまり、炎症を起こすことが原因であると考えられます。

通常の寝違えであれば数時間から数日で痛みが改善していきます。もし、1週間以上たっても痛みが引かなかったり、徐々に痛みが強まったりする場合は、他の疾患の可能性もあるため、整形外科を受診しましょう。

首の後ろの痛みを予防する生活習慣

首の後ろの痛みを予防するためには、首に負担のかからない生活習慣を身に付けることが重要です。正しい体の使い方を身に付けるためのエクササイズや、筋肉の負担を和らげるためにストレッチを行うのも良いでしょう。できることから始めてください。

正しい姿勢を意識する

デスクワーク 良い姿勢 悪い姿勢
スマホ操作 良い姿勢 悪い姿勢
歩き方 良い姿勢 悪い姿勢

首に負担がかからないようにするには、正しい姿勢を心がけることが大切です。猫背になったり、首が下を向いたりしないように注意しましょう。また、あごを引いた姿勢を意識すると頚長筋が働きやすくなるため、首にかかる負担を減らすことができます。

パソコンに向かう時の正しい姿勢について詳しく知りたい方は次の記事をチェックしてください。

「パソコンに向かう姿勢が原因?肩こり・腰痛が起こる原因と正しい姿勢を保つためのデスク周りの調整法をご紹介」の記事へ >

同じ姿勢を長時間続けない

デスクワークをする場合は30分に1回は首を動かしたり、スマホを長い時間見続けないようにしたりすることで、首にかかる負担の軽減を図りましょう。

首まわりのエクササイズ

首まわりの筋肉を正しく使えるようにすることは、首の後ろの痛みを予防するためにとても効果的です。特に意識したいのが、首の骨の前に深く位置し、首を安定させて滑らかに動かすインナーマッスル「頚長筋(けいちょうきん)」です。「水平にあごを引く」エクササイズで、頚長筋の働きを促し、首の負担を軽減しましょう。

頚長筋

1. タオルを使ったエクササイズ

水平に前に引く、水平にあごを引く

1. 椅子に座った状態で背すじを伸ばす

2. 首の付け根にタオルをかけて両手で軽く前に引き、同時に水平にあごを引く

タオルの他に、ベルトやネクタイなどの代用も可能です。

2. 仰向けで行うエクササイズ1

ひざを立てる、ゆっくりとあごを引く

1. 両足を肩幅に開き、両膝を立てて仰向けで寝る

2. 丸めたタオルを首の下のすき間に入れる

3. ゆっくりと口から息を吐きながら軽くあごを引き、5秒キープして元に戻る

4. 1~3を8回行う

就寝前など仰向けになった状態でも行えます。タオルの代わりに自分の手を使うのもおすすめです。

3. 仰向けで行うエクササイズ2

ひざを立てる、あごを引く

1. 仰向けで行うエクササイズ1の姿勢から(両足を肩幅に開き、両膝を立てて仰向けで寝る)

2. 軽くあごを引く

3. ゆっくりと口から息を吐きながら、首の骨を上から順に動かして頭を持ち上げる

4. 肩が床から離れたら、鼻から息を吸いながら、首の骨を下から順に動かして戻る

頭を持ち上げる時に、あごから先に持ち上げてしまうと頚長筋が働かないので注意しましょう。

首まわりの筋肉のストレッチは次の記事でご紹介しています。気になる方はチェックしてください。

「首の後ろの痛み」に関するよくある質問(FAQ)

Q:首の後ろの痛みはどのくらいで治りますか?

A:痛みが治るまでの期間は原因によって異なります。目安は以下の通りです。

•   寝違え:数時間~数日で改善することが多い

•   頚椎捻挫:軽症では数日〜数週間

•   頚椎椎間板ヘルニア:保存療法で数週間〜数か月かけて改善するケースが多いが、症状が重い場合は手術が検討されることもある

1週間以上たっても痛みが改善しない、徐々に痛みが強くなる場合は、整形外科などの医療機関を受診して原因を確認しましょう。

まとめ

首の後ろの痛みのほとんどは、誤った体の使い方のまま、首を動かす、同じ姿勢を長時間続けるなどした積み重ねの負担が原因です。正しい体の使い方や生活習慣を身に付け、首に負担が蓄積しないように心がけましょう。

首の痛みが治らない場合は、さまざまな疾患が潜んでいる可能性があります。痛みが続く場合や徐々に強くなる場合、しびれや吐き気を伴う場合などは早めに整形外科を受診しましょう。

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