MEDIAIDクリニック

「腰」の痛み診療室

監修医:夏山 元伸
(なつやまもとのぶ)

島脳神経外科整形外科医院副院⾧、内視鏡、腰痛センター⾧

1954年生まれ。1979年東京大学医学部卒業、同医学部付属病院整形外科に入局。1990年関東労災病院スポーツ整形外科、2001年関東労災病院整形外科部⾧。2005年第5回アジア太平洋最小侵襲脊椎手術学会会長。2013年より島脳神経外科整形外科副院⾧、内視鏡、腰痛センター⾧。

腰の痛みを感じたら

はじめに

腰痛は、約1300万人の方が悩まされている、日本でもっとも多い疾患です。
最近では若い女性でも、腰痛で病院を訪れるほどです。
一口に腰痛と言っても様々で、「安静にしていれば痛まない」、「動いている方が痛まない」、「いつもズキズキ痛む」などがあります。
また原因も

  • ①整形外科的要因:骨の変形、先天性、筋肉の疲労、運動不足からくる筋肉の衰え
  • ②内臓疾患
  • ③精神的な要因

など限りなくあります。
専門医の治療が必要な場合もありますが、骨や筋肉などの整形外科的要因から生ずる腰痛は、生活の中での正しい腰痛の対策により予防でき、あるいは痛み始めた場合でも症状を軽くすることができます。
ここでは中高年に多い腰の痛みとその構造、次に症例のメカニズムと治療、ケアについて解説いたします。

腰を痛めやすい人には共通の傾向があります

腰の痛みの原因は様々ですが、なりやすい人には共通の傾向があります。
立ったままその場での作業は、筋肉疲労と不良姿勢(腰の反り返り)によって椎間板(ついかんばん)にかなりの負担がかかるために腰痛になりやすく、またずっと座っている姿勢も、立っている状態より椎間板にかかる負担は大きく、不良な姿勢から腰痛になりやすいといえます。

腰痛になりやすい人には共通の傾向
  • ・同じ姿勢を長時間続けている
  • ・重労働や運動のしすぎで筋肉疲労がある
  • ・運動不足で足腰の筋力が低下している
  • ・きつい下着をつけて血行が悪くなっている
  • ・体がかたく、筋肉が緊張しやすい
  • ・神経質な人は痛みを感じやすい

また軽い腰痛、原因がはっきりしない腰痛などをまとめて、いわゆる「腰痛症」といいます。中腰で重いものを持ったりしたときなど、急に腰が痛くなり動けなくなった状態を一般的に「ぎっくり腰」といいます。

痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

体重や筋肉の圧迫による関節への負担は、サポーターを着用することで軽減が期待できます。

腰は負担のかかりやすい部位です

身体を曲げる、反る、ねじるといった動きを担う腰は、5つの骨が積み重なった腰椎(ようつい)と骨盤で構成されています。腰の上半身を支えると同時に、下半身から伝わる衝撃を受け止める役割を持ち、負担のかかりやすい部位です。
正常な脊柱(せきちゅう)はS型にカーブしています。(図1)人間が起立歩行するようになった過程でつくられたのが脊柱のS字カーブ。足から頭への衝撃を吸収し、上半身の柔軟な動きを可能にします。
S字型の脊椎が全身の姿勢バランスをとることで、まわりの筋肉や靭帯(じんたい)の負担が軽減されるのです。
脊柱は、椎骨(ついこつ)と椎間板(ついかんばん)でつくられています。
脊柱は頚椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)からなり、頚椎から腰椎までのひとつずつの骨を椎骨といいます。椎骨と椎骨の間には『椎間板』があり、クッションの役割をはたしています。そして脊柱は筋肉と靭帯のワイヤーロープに支えられています。そのままでは安定せず、靭帯・腹筋・背筋などがワイヤーロープのように脊柱を支え、必要な時にはしなやかな動きに対応しています。そのため、筋力が弱くなると脊柱を十分に支えられず、S字カーブがくずれて腰痛の原因となるのです。その他、痛みが発生する箇所、具合によって中高年の方に起こりやすい症例と、そのメカニズムについて紹介していきます。

体重や筋肉の圧迫による関節への負担は、サポーターを着用することで軽減が期待できます。

腰痛 代表的な症例とケア

椎間板ヘルニア

症例概要(症状・リスク)

腰や臀部(でんぶ)が痛み、下肢にしびれや痛みが放散したり、足に力が入りにくくなります。
背骨が横に曲がり、動きにくくなり、重いものをもったりすると痛みがつよくなることがあります。
椎間板は線維輪(せんいりん)と髄核(ずいかく)でできていて、背骨をつなぎ、クッションの役目をしています。その一部が出てきて神経を圧迫し症状が出ます。加齢などにより椎間板が変性し断裂して起こりますが、悪い姿勢での動作や作業、喫煙などでヘルニアが起こりやすくなることが知られています。

治療・ケア

痛みが強い時期には、安静を心がけ、コルセットや腰サポーターをつけたりします。また、消炎鎮痛剤の内服や坐薬、神経ブロックを行い、痛みをやわらげます。腰を温めるのも効果的です。痛みが軽くなれば牽引(けんいん)や運動療法を行うこともあります。
前屈みになると椎間板は余計に背中側へ突出しますが、背中を反らすと椎間板にはお腹側へ戻る力が働きますので、背中を反らすストレッチは有効です。
これらの方法でよくならない場合や下肢の脱力、排尿障害があるときには手術をお勧めすることがあります。最近では内視鏡を使った手術も広く行われるようになってきました。

骨粗鬆症

症例概要(症状・リスク)

骨粗鬆症は、痛みが発生しないものが大半です。しかし、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。骨折が生じやすい部位は、背骨、手首の骨などです。
骨折が生じると、その部分が痛くなり動けなくなります。また、背中や腰が痛くなった後に、丸くなったり身⾧が縮んだりします。
骨の絶対量が減少した状態であり、老人性骨粗鬆症が最も多く、閉経後の女性に多く見られます。 高齢者が軽く尻もちをついただけで強い腰痛を訴えた場合は、骨粗鬆症を起因とした脊椎の圧迫骨折が疑われ、股関節を痛がる場合は、大腿骨の頸部骨折(けいぶこっせつ)が疑われます。

治療・ケア

内服薬や注射(副甲状腺ホルモン)などによる治療を行います。骨折した場合は、それに応じた治療が必要です。閉経後の女性には、整形外科医の定期的な検診をお勧めします。

筋・筋膜性腰痛

症例概要(症状・リスク)

いわゆる腰痛症の中で、筋・筋膜性腰痛症がかなりの割合を占めています。筋膜性腰痛症の症状は動作時の腰痛を主体とし、安静をとると軽減します。腰背筋膜は腰部全体を覆っているので、痛みの部位も骨盤の両脇から、仙骨、背部にいたるまで、さまざまです。
筋・筋膜性腰痛症は筋疲労や姿勢異常(姿勢性腰痛症、静力学的腰痛症)が原因となります。一方、椎間板変性や変形性脊椎症、腰椎分離・すべり症、骨粗しょう症などの原疾患が基盤にあり、二次的に筋・筋膜性腰痛症を起こしている例も少なくありません。

治療・ケア

筋・筋膜性腰痛症は除外診断的な要素が多く、腰椎椎間板ヘルニアや分離症を否定しておく必要があります。 足のしびれや、筋力低下、坐骨神経痛があれば、MRIなどで他疾患を疑う必要があります。筋・筋膜性腰痛症であれば治療はリハビリや薬物療法が主体となります。再発傾向の強い方は原因の精査と治療が必要です。

腰部脊柱管狭窄症

症例概要(症状・リスク)

この病気では⾧い距離を続けて歩くことができません。
もっとも特徴的な症状は、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行(かんけつせいはこう)です。
腰部脊柱管狭窄症では腰痛はあまり強くなく、安静にしている時にはほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、太ももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。しかし、すこし前屈みになったり、腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されます。加齢や背骨の病気による影響で変形した椎間板と、背骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫されます。
脊柱管は背骨、椎間板などに囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。年をとると背骨が変形したり、椎間板が膨らんだり、黄色靱帯が厚くなって神経の通る脊柱管が狭くなり(狭窄)、それによって神経が圧迫され、血流が低下し脊柱管狭窄症が発症します。
椎間板ヘルニアに比べ中高年に発症することが多いようです。

治療・ケア

日常生活上の注意としては、姿勢を正しく保つ事が必要です。神経の圧迫は腰をまっすぐに伸ばして立つと強くなり、前屈みになるとやわらぎますので、歩く時には杖をついたりして腰を少し屈めるようにすると楽に歩けます。また、自転車でのトレーニングも痛みが起こりにくいので、よい運動になります。
治療としてはリハビリテーション、コルセット、神経ブロックや脊髄の神経の血行を良くする薬などがあります。これらで症状が改善することもあります。
しかし、歩行障害が進行し、日常生活に支障が出てくる場合には手術を行うこともあります。また両足に症状が出ている場合には、改善することが少ないので手術を行う場合が多いわけです。最近は内視鏡を使った手術も行われています。

腰椎分離・すべり症

症例概要(症状・リスク)

腰痛の場合と、お尻や太ももの痛みを出す場合があります。痛みは腰椎を後ろにそらせた時に強くなります。多くは体が柔らかい若い時期に、ジャンプや腰の回旋を行うことで腰椎の後方部分に亀裂が入って起こります。
また「ケガ」のように1回で起こるわけではなく、スポーツの練習などで繰り返し、疲労の蓄積などから起こります。分離症が原因となり、その後腰椎の位置がずれ、分離すべり症に進行していく場合があります。

治療・ケア

分離症があっても強い痛みや日常生活の障害なく生活できる場合が大部分です。腹筋・背筋を強化して、一般的な腰痛予防を心がけましょう。
日常生活や仕事に支障が生じれば、神経の圧迫を除去する手術が行われます。

変形性腰椎症

症例概要(症状・リスク)

椎間板が傷み、厚みが減り、椎間板に接した椎体が骨硬化し、前後に骨棘(こつきょく)ができます。後方にある左右の椎間関節も傷んできます。
変形性腰椎症が高じて、脊柱管が狭くなった状態が、腰部脊柱管狭窄症です。腰痛だけでなく、脚のしびれや痛みがでてきたら、この腰部脊柱管狭窄症を考えます。
また、ただ椎間板だけが傷んでいてそこから痛みがでる場合は腰椎椎間板症、傷んだ椎間板が何かのきっかけで膨らんだり飛び出したりして神経を圧迫して脚の痛みがでる状態を椎間板ヘルニアと呼んでいます。

治療・ケア

内服薬は消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などを含んだ外用薬、温熱療法などの理学療法などが中心です。また、痛みが強い部位への注射や神経ブロックなどを行うこともあります。痛みは安静で治ることも多く、手術を必要とすることはありません。

ページトップへ