『熱中症』で『下痢』になる?原因とメカニズム、応急処置とNG行動について解説

2026.06.29 最終更新日: 2026.06.30

暑い時期に気を付けたい熱中症。めまいや頭痛、立ちくらみが代表的な症状として知られていますが、実は「下痢」や「腹痛」といった消化器系のトラブルが現れることもあります。

熱中症による下痢は、単なる冷えや食べすぎによる消化不良ではなく、体内で異変が起きている警告信号の可能性があり注意が必要です。

今回は、なぜ熱中症で下痢が引き起こされるのか、発症時の正しい応急処置、やってはいけないNG行動について解説します。

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監修医:伊藤  重範(いとう しげのり)

医療法人三九会 三九朗病院 循環器内科 常勤医師

名古屋市立大学卒業。関連病院、ワシントン(DC)ホスピタルセンター循環器内科、豊橋ハートセンター、名古屋市立東部医療センター(現名古屋市立大学医学部附属東部医療センター)などを経て、医療法人三九会 三九朗病院循環器内科で勤務中。

この記事はメディコレWEBを通じた医師監修を受けています。

この記事のポイント

● 熱中症を発症するメカニズム、熱中症で下痢が起こる原因を解説

● 熱中症で下痢になった場合の応急処置とNG行動、医療機関受診の目安

● 暑い時期を乗り切るための正しい熱中症対策をご紹介

熱中症で下痢が起こるのはなぜ?原因とメカニズム

熱中症になると下痢の症状を伴うケースもあります。熱中症で下痢が起こる原因とメカニズムを見ていきましょう。

熱中症とは

熱中症とは、暑い環境に身を置いたり、暑さの中で運動をしたりすることによって発症する病気です。発汗により脱水症状になり、高温で体温調節機能が正常に働かなくなることで、体内に熱がこもってさまざまな症状が引き起こされます。

熱中症は、めまいや立ちくらみ、こむら返りといった軽い症状から始まります。対処しなければ、時間の経過とともに倦怠感や頭痛、吐き気へと症状が進行し、最悪の場合には意識障害や多臓器不全に陥るなど、命に関わる状態になる可能性もあます。

乳幼児から大人、高齢者まで誰でも発症する可能性があり、屋外の炎天下に限らず締め切った屋内でも起こるリスクがあります。特に激しい運動で体内に大量の熱がこもり体温が上昇している時は、外気温がそれほど高くなくても発症のリスクが高まります。また、炎天下や工事現場といった屋外だけでなく、一般家庭の浴室やキッチン、気密性の高い建物の最上階など「高温多湿で風がない環境」では特に熱中症になりやすいといわれています。

熱中症を発症するメカニズム

本来、私たちの体には体温を一定に保つ体温調節機能が備わっています。運動や環境によって体温が上昇すると、皮膚の末梢血管を拡張させて内部の熱を体の外へと逃がしたり(熱放散)、汗をかいたり(気化熱)することによって、体温が上昇しすぎないように調節しています。しかし、蒸し暑い環境下で激しい運動をしたり、長時間過ごしていたりすると、次第に体内の熱をうまく外に逃がすことができなくなり、熱中症を引き起こします。

体温が上昇するにつれて汗をかき、汗とともに体内の水分と塩分が失われてしまい、脱水状態に陥ります。その結果体内の血液の流れが悪くなり、徐々に汗も作れなくなります。汗をかけなくなることで体外に熱を逃がすことができなくなり、体温が上昇します。

脳や臓器は平熱(およそ36.5度±0.5度)で正しく働くようにできています。しかし、体温が上昇し続けると、これらの機能が障害されさまざまな不具合が起きるようになります。また、大量の発汗によって水分や塩分が不足する脱水状態になると、脳や臓器に血液がいきわたらなくなり、筋肉の痛みやこむら返り、意識障害や肝臓・腎臓機能の低下をもたらします。

下痢は熱中症の症状として必ずしも現れるものではありません。熱中症を発症する中で、体内の血流や水分が体温を下げるための血管拡張や発汗機能のために優先的に配分されることで、胃や腸などの内臓(消化器)の血流が不足がちになることや炎症により腸管バリアが破綻して水分吸収が低下することで吐き気や腹痛などと共に下痢が生じると考えられています。

下痢を含む熱中症の症状と分類

熱中症の症状は多岐にわたります。重症度によって3つのステージに分類されます。

表:熱中症の重症度と症状

Ⅰ度:軽症 意識ははっきりしていて、体温は平熱~38度台です。皮膚の血管が広がることで血圧が低下し、めまいや立ちくらみなどの症状が出ます。また、大量の発汗によって体から水分と塩分が失われることで、筋肉の痛みやこむら返り、手足のしびれなどの症状が出ます。涼しいところに移動して、水分と塩分を摂取するなどの応急処置が必要です。
Ⅱ度:中等症 Ⅰ度(軽症)と同様に、意識ははっきりしていて、体温は38~40度程度が多いです。しかし、脱水が進行して、全身のだるさや集中力の低下、頭痛、吐き気、嘔吐などのいわゆる「熱疲労」と呼ばれる症状が現れます。下痢の症状は、中等症に含まれており、Ⅰ度よりも一歩進行した危険な状態です。II度に相当する症状がある場合はすみやかに医療機関を受診する必要があります。
Ⅲ度:重症(熱射病) 熱中症がさらに進行し、意識障害と高体温(体温が40.0度以上が多い)、腎臓・肝臓機能の障害、血液凝固異常が生じ、命に関わる状態です。普段と明らかに違う言動やふらつき、呼びかけに応じない、全身のけいれんなどの「熱射病」と呼ばれる症状が出ます。一刻を争う状況のため、迷わず救急車を呼び、専門的な集中治療を受ける必要があります。

熱中症で下痢になった場合の応急処置とやってはいけないNG行動

熱中症はそのままにしておくと、時間の経過とともにⅢ度(重症)へと進行します。特に下痢の症状はⅡ度(中等症)に該当するため、すみやかに対処する必要があります。熱中症で下痢になった場合の正しい応急処置とNG行動を解説します。

まず熱中症の応急処置を行う

熱中症に対する応急処置は、「1.涼しい場所への移動」「2.脱衣と冷却」「3.水分・塩分の補給」が基本です。ただし、呼びかけても受け答えができない、立ち上がって歩くことができないなど、明らかにいつもと様子が違う時はⅢ度(重症)の可能性があります。ためらわずに救急車を呼び、それと並行して応急処置を行いましょう。

1.涼しい場所へ移動する

まずは暑い環境から避難します。風通しの良い日陰やエアコンが効いた屋内など、可能な限り涼しい環境へ移動しましょう。外部からの体温の上昇を抑えることが重要です。

2.衣服を脱いで体を冷やす

涼しい場所へ移動したら、衣服をゆるめ体を冷やします。衣服を脱いで霧吹きなどで皮膚に水を吹きかけたり、扇風機やうちわで風を送ったりと、水分が蒸発する時の「気化熱」を利用して体を冷却するのも効果的です。

冷たいタオルや保冷剤などを、首の横や脇の下、太ももの付け根など太い血管が通る部位にあてて冷やすのも良いでしょう。冷やされた血液が全身へ巡り効率的に体温を下げることができます。

3.塩分・水分を補給する

熱中症による下痢の症状がある場合は、発汗だけでなく下痢によって体内から水分と塩分が急速に失われている脱水状態にあります。そのため、水分と塩分を補給する必要があります。汗で失われた塩分も適切に補給できる経口補水液やスポーツドリンク、食塩水(水1Lに1~2g の食塩を入れたもの)を飲むと、水分と塩分をバランスよく取ることができます。

ただし、水分を取ることが困難なほど吐き気が強いなどの場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。

自己判断で下痢止め薬を服用するのはNG

下痢を止めるために自己判断で市販の下痢止め薬を服用することは避けてください。万が一、下痢の原因が病原体(細菌やウイルスなど)による食中毒などの感染症であった場合、薬で便の排出を抑えてしまうと、本来体の外に排出されるべき病原体や毒素が体内に留まり症状を悪化させる危険性があります。まずは体の冷却や水分・塩分の適切な補給を優先して行いましょう。

下痢が続く場合は医療機関へ

応急処置を行っても下痢が治まらない、症状が悪化している場合は、すみやかに医療機関を受診してください。可能であれば下痢の継続期間や回数、便の状態などを記録して医師に伝えましょう。熱中症は回復したように見えても体にダメージが残っていることがあるため、心配な症状が続いている時はすみやかに医師に相談してください。

夏の暑い季節は熱中症対策しよう

外で水を飲む女性の写真

熱中症は適切な対策をすることで防ぐことが可能です。生活習慣を意識したり、暑さに対する工夫をしたりするなど、自分でできる対策から今すぐはじめましょう。

生活習慣を意識する

本格的な暑さになる前に普段の生活習慣を見直して、熱中症を予防しましょう。

1.こまめに水分を取る

暑い時期には体温調節のために汗をかくため、体の水分が不足しがちになります。喉が渇いていなくても水分を取る習慣を身に付けましょう。

2.程よく塩分を取る

暑い環境で大量の汗をかくと、水分と一緒に塩分やミネラルを失ってしまいます。水分を補給する時は水1Lに対して1〜2gの食塩を取る必要があります。汗をかいた時は、塩分を手軽に摂取できる経口補水液やスポーツドリンクなどを飲むようにしましょう。

3.バランスの良い食事を取る

主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスの良い食事を1日3食規則正しく摂取し、生活のリズムを整えましょう。また、朝食は寝ている間に失った水分や塩分、エネルギーを補給する大切な役割があるため欠かさずにとりましょう。熱中症予防の観点からは味噌汁やスープを取り入れるのもおすすめです。

4.十分な睡眠を取る

十分な睡眠を確保し、疲労を蓄積しないことが熱中症の予防につながります。エアコンを活用するとともに、快適な寝具で睡眠環境を整え、質の良い睡眠が取れるように意識しましょう。

暑さに対する工夫をする

熱中症対策の2つ目の柱は、暑さに対する環境調整です。過ごす場所や温度、衣服などを工夫しましょう。

1.直射日光を避ける

屋外で活動する時は、直射日光を浴びないように気を付けましょう。屋内に移動して休憩したり、帽子や日傘などを活用したりしましょう。

2.涼しい場所を選ぶ

熱中症は屋外でも屋内でも起こります。温湿度計を活用して自分が過ごす場所の温度と湿度を常に確認し、必要に応じて涼しい場所へ移動したりエアコンなどによる環境温度の調整を行ったりしましょう。

3.衣服に気を使う

綿や麻などの素材、吸水性・速乾性に優れた素材などの衣服を選びましょう。また、風通しの良い衣類を選ぶと汗をかいても快適に過ごせます。服の色は外の熱を吸収しにくい、白や淡い色がおすすめです。

ただし、屋外で体を動かす必要がある時は通常の工夫では限界があります。体を効果的に冷やし、体温の上昇を防ぐ冷却ベストなどを活用するのもおすすめです。

よくある質問(FAQ)

Q:熱中症の下痢はいつまで続きますか?

A:熱中症に伴う下痢の回復期間は、症状の重さや脱水の程度によって異なります。下痢の症状は熱中症のⅡ度(中等症)に該当するため注意が必要です。応急処置をしても症状が改善しない、水分が取れないほど吐き気が強いといった場合は躊躇せず医療機関を受診してください。

Q:熱中症で下痢になった時、水分はどのように摂取すれば良いでしょうか?

A:熱中症で下痢になった時は、水だけでなく塩分も一緒に補給することが重要です。発汗と下痢の両方によって水分と塩分が急速に失われているため、以下の3つのポイントを意識して補給しましょう。

•   適した飲み物を選ぶ:経口補水液、スポーツドリンク、または食塩水(水1Lに1〜2gの食塩を入れたもの)

•   少量ずつこまめに飲む:一度に大量に飲むと胃腸に負担がかかるため、少量ずつ何度も分けて飲む

•   飲めない時は無理せず受診する:吐き気が強くて水分を取ることができないなどの場合は医療機関を受診する

なお、塩分を含まない水だけを大量に飲み続けると、血液中の塩分濃度が下がり、かえって熱中症が悪化する危険があるため注意しましょう。

まとめ

熱中症による症状は多岐にわたりますが、下痢の症状が現れる場合もあります。熱中症に伴って下痢の症状がある時は注意が必要です。症状に気付いた時は応急処置を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

熱中症は誰でも発症する可能性があります。本格的に暑くなる前に生活習慣や環境を見直して、普段から対策を行いましょう。また、仕事やスポーツなどで過酷な暑さの元で活動しなくてはならない時は、基本的な熱中症対策に加えて冷却ベストをはじめとした冷却グッズを取り入れるのも良いでしょう。

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発信者

シグマックス・MEDIAID事務局

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