ファン付き作業着が「効かない」と感じる理由とは?効果を引き出す方法と代替策まで徹底解説

2025.08.01 最終更新日: 2025.12.02

夏の現場で多くの方が頼りにするファン付き作業着。しかし「思ったほど涼しくない」「効かない気がする」と感じている方は少なくありません。

本記事では、ファン付き作業着が効かないと感じる主な理由を整理し、効果を引き出す代替策を解説します。

暑さに負けず安全に作業を続けるために、ぜひ参考にしてください。

ファン付き作業着が「効かない」「涼しくない」と感じる主な原因

ファン付き作業着を着ているのに「暑い」「涼しさを感じられない」と感じる原因として、以下の6つが挙げられます。

● サイズが合わず空気の循環ができていない

● 外気温が高い

● 送風経路が確保されていない状態で着用している

● ファンの吸気が妨げられている

● 汗をかいていないため気化熱が働かない

● ファンやバッテリーの劣化による風量不足

次の章でひとつずつ詳しく確認していきましょう。

● サイズが合わず空気の循環ができていない

ファン付き作業着が効かないと感じる原因のひとつは、サイズが身体に合っていないことです。

小さすぎるサイズを選ぶと、生地が身体に張り付いてしまい、ファンが送り込む風が服の中を巡りません。結果、汗が蒸発しにくくなり、身体の熱を逃がせずに蒸れやすくなります。

逆に大きすぎるサイズでは、取り込んだ風がすぐ袖口や裾から抜けてしまい、全身に行き渡らないまま外に逃げてしまいます。

● 外気温が高い

体温を超えるような酷暑環境では、ファン付き作業着の効果が大きく低下します。そもそも取り込む外気そのものが熱いため、服のなかに循環させても冷却どころか温風を浴びているような状態になってしまうのです。

実際、WBGT(暑さ指数)が28を超える「厳重警戒」レベルでは熱中症発生率が著しく上昇するとの統計もあり、この段階ですでに作業環境は高リスクといえます。そのため、ファン付き作業着のみでの対策には限界があり、日陰の確保、冷房の効いた休憩所の利用、こまめな水分補給などを必ず併用することが重要です。

参考:環境省「熱中症予防情報サイト

● 送風経路が確保されていない状態で着用している

ファン付き作業着は、衣服内に風を循環させ、首元や袖口から熱気を逃がす構造になっています。つまり、首元から風が抜けるのは本来の設計意図に沿った動きです。

しかし、ファンの位置やサイズ、着方によっては、送風経路がうまく機能せず、風が背中や脇に届かないことがあります。たとえば、リュックやハーネスでファン付き作業着が身体に密着していたり、内側にインナーを重ねすぎたりすると、風の循環が妨げられてしまいます。

結果として、衣服内に風が十分に通らず、全身の冷却効果が低下するのです。見た目は風が出ていても、実際には効いていない状態です。正しいサイズ選びや着方を意識することで、本来の送風設計が働き、全身で涼しさを感じられるようになります。

● ファンの吸気が妨げられている

ファンが外気を取り込まなければ、作業着のなかで風を循環させる仕組みが機能しません。

リュックサックの背当て部分や作業用の腰ベルトがファンの外側を覆ってしまうと、取り込む風が制限され、風量が極端に減少します。結果的に作業着全体が膨らまず、風が行き渡らないため「効いていない」と感じやすくなるのです。

また、首にタオルを厚く巻くと、今度は空気の出口が塞がれて排気が滞ります。風がスムーズに流れない状態では、汗が蒸発して身体を冷やす作用が働かずに冷却効果は半減します。

● 汗をかいていないため気化熱が働かない

身体がまだ汗をかいていない状態だと、ファン付き作業着を着ても涼しさを感じにくいです。

ファン付き作業着の冷却効果は、汗が蒸発するときに身体から熱を奪う気化熱によって成り立っています。ところが汗が出ていない段階でスイッチを入れても、身体の水分が奪われないため、ただのぬるい空気にしか感じられません。

たとえば、朝の涼しい時間帯に着てみても「風は当たっているけど全然冷たくない」と感じるのは、汗の蒸発が起きていないためです。汗をかき始めると風が肌の水分を奪って涼しさを実感できます。

● ファンやバッテリーの劣化による風量不足

長期間使ったファン付き作業着が涼しく感じられない場合、ファンやバッテリーの劣化が考えられます。

ファン付き作業着は、バッテリーの電力でファンを回して外気を取り込み、服の内部を循環させる仕組みです。しかし、使用を重ねるごとにバッテリーの性能は低下し、風量が弱まります。

ファンやバッテリーの劣化は避けられないため、定期的な交換が必要です。交換部品はメーカーごとに互換性が異なるため、仕様を確認してから準備しましょう。

また、職場全体での暑さ対策を進めることも大切です。離職率改善につながる熱中症対策は、以下の記事を参考にしてください。

ファン付き作業着をより涼しく活用するための工夫

ファン付き作業着をより涼しく活用するための工夫は次の5つです。

● コンプレッションインナーで汗を効率よく気化させる

● インナースペーサーで空気の通り道を確保する

● 保冷剤や冷感タオルで体感温度を下げる

● 身体に合ったサイズを選び、適切に着用する

● 風の流れを調整する

● コンプレッションインナーで汗を効率よく気化させる

ファン付き作業着の涼しさを引き出すには、着用するインナーの素材が重要です。

吸汗速乾性や接触冷感性を備えたコンプレッションインナーは、汗を素早く吸収して生地全体に拡散し、汗が効率よく蒸発して体温の上昇を抑えられるのが特徴です。

一方、綿素材のような乾きにくいインナーを着用すると、汗の蒸発が進みにくくなります。

汗が気化しない状態ではファン付き作業着の冷却効果を十分に発揮できないため、インナー選びを重視しましょう。

● インナースペーサーで空気の通り道を確保する

ハーネスやリュックで背中が押さえつけられても、インナースペーサーを使用すれば風の通り道を確保できます。

インナースペーサーは、肩や背中に厚みをつくって一定の空気層を保つ構造です。風が途切れず衣服内を巡るため、背中に熱がこもるのを防ぎやすくなります。

また、コンプレッションインナーとの併用により、汗の蒸発と風の循環が同時に機能し、より高い冷却効果が得られます。

● 保冷剤や冷感タオルで体感温度を下げる

保冷剤や冷感タオルを併用すれば、ファン付き作業着だけでは得られない直接的な冷却効果を加えられます。

保冷剤を収納できるポケット付きの作業着なら、冷気が衣服内を循環して体感温度を直接下げられます。背中や脇に保冷剤を入れておくと、風と冷気の両方で効率的に身体を冷やせるのが特徴です。

また、薄手の冷感タオルを首に巻く方法も有効です。首の動脈を冷やすことで全身の体温を下げやすくなり、作業中のリフレッシュにもつながります。

● 身体に合ったサイズを選び、適切に着用する

ファン付き作業着は、衣服内に取り込んだ風を首元や袖口などの開口部から排出しながら、身体を冷やす仕組みです。したがって、首元を過度に締めたり密閉したりすると、排気が妨げられ、内部に熱がこもりやすくなります。

一方で、サイズが大きすぎたり袖口が開きすぎたりすると風が十分に循環せず、冷却効果が低下します。適度にフィットしたサイズを選び、風がスムーズに「流入→循環→排出」できる経路を保つことが大切です。

また、面ファスナー(マジックテープ)やゴム入りの袖口は、風を閉じ込めるためではなく流れをコントロールするための補助機能です。袖口の開き具合を微調整して、風が脇や背中まで届くよう調整すると、涼しさを最大限に引き出せます。

● 風の流れを調整する

ファン付き作業着は、風の流れを適切に調整すれば、熱がこもりやすい部位を重点的に冷やせます。

直射日光を受けやすい背中や肩に風を送り込み、首元や脇下などの開口部から排気させることで、衣服内の熱を効率よく逃がすことができます。

多くのモデルではファンの角度を直接変えることはできません。しかし、ファンの位置や衣服のフィット感、姿勢の取り方によって風の流れ方は大きく変わります。たとえば、ファンが腰付近にあるタイプでは、背中を少し反らすだけで風が首元へ抜けやすくなります。

ファン付き作業着が効かない環境におすすめのアイテム

気温や湿度が極端に高い環境では、ファン付き作業着だけでは涼しさを実感できないことがあります。そのような場合、首や身体を直接冷やす以下のアイテムを活用するとよいです。

● ネッククーラー

● アイスベスト

● アイシングギア ベスト2

● ネッククーラー

ネッククーラーは、首の両側を通る太い血管(頚動脈)のまわりを効率よく冷やせる冷却アイテムです。

冷却ジェルや保冷剤が入ったバンドを首に巻くだけで使用でき、装着から15〜20分ほどで体温を下げられます。軽量設計の製品が多く、歩行や荷物の持ち運びを妨げないため、屋外作業や倉庫作業でも使いやすい仕様です。

たとえば、立ち作業が続いて集中力が落ちてきたタイミングで使用すれば、短時間で身体がすっきりし、作業への集中力を取り戻しやすくなります。

簡単に装着でき、繰り返し使用できる点もメリットです。日常的に暑さ対策を気軽に取り入れたい方に向いています。

● アイスベスト

アイスベストは、保冷剤を背中や脇下にセットして身体を直接冷やす構造の冷却ベストです。氷点近くまで冷えた保冷剤の冷気が肌に伝わるため、短時間でも体温を効率的に下げられます。

保冷剤の種類やサイズによって持続時間は異なりますが、1〜2時間ほど強い冷却感が得られるため、真夏の休憩時間や直射日光下での立ち作業に適しています。

ファン付き作業着と重ねて使用すれば、送風によって冷気が衣服内を循環し、体感温度がさらに下がります。

使用後の保冷剤は家庭用冷凍庫で再凍結できるため、繰り返し使えて経済的です。短時間でも確実に身体を冷やしたい方に適しています。

● アイシングギア ベスト2

メディエイド アイシングギア ベスト2

医療メーカーが作る"日本初"のペルチェ式冷水循環服

準備はバッテリーの充電のみ。酷暑でも5時間冷感が持続するペルチェ×水冷式の「速・軽・快」な冷却服。

アイシングギア ベスト2は、2025年5月に発売された高性能の冷却ベストです。ペルチェ式冷却と水冷循環を組み合わせた「4C-Peltier System」を搭載し、気温35℃の酷暑環境でも最大5時間、安定した冷却効果を持続できます。

ファン付き作業着のように汗の気化に頼らず、一定の温度で冷却ができます。湿度の高い現場でも冷却効果を発揮するのが特徴です。

価格は税込159,500円と高額ではあるものの、バッテリーの充電と水(水道水)しか使わないのでランニングコストを抑えられ、長期的に見るとコストパフォーマンスが高いです。

また着用するアイテムなので、作業場全体を冷やすために大型エアコンを稼働させる必要がなく、局所的に体を効率よく冷却できる点は環境負荷の軽減につながります。電力消費を抑えながら熱中症対策ができるため、企業のサステナブル経営やCSRの観点からも導入するメリットは大きいです。

建設現場や製造ラインなど、炎天下での作業が続く現場では、熱中症対策の一環として欠かせない装備のひとつです。業務用としての導入実績も増えており、企業単位での一括採用にも適しています。

ファン付き作業着が効かない状況では熱中症に注意

ファン付き作業着を着用していても、「涼しさを感じない」「効果がない」と感じる場合は、すでに体内に熱がこもっている危険な状態かもしれません。

炎天下や湿度の高い現場では、外気そのものが高温になるため、作業着に取り込まれる風もぬるく、体温を十分に下げられないことがあります。そのまま作業を続けると体温は上昇し、生命の危機に直結します。さらに、暑さは集中力の低下や判断ミス、疲労の蓄積といった間接的なリスクにもつながり、事故やトラブルを引き起こす要因です。

ファン付き作業着はあくまで冷却をサポートするための補助的な道具です。体温を下げるだけでなく、集中力を維持しやすくなる心理的なメリットもありますが、過信は禁物です。以下のような基本的な熱中症対策を徹底しましょう。

● 水分・塩分補給

● 休憩の確保

● 呼吸環境の調整

● 体調変化の早期対応

個人だけでなく職場全体でリスクを共有し、万全の熱中症対策を組織として整えることが重要です。

以下のチェックリストや早見表もぜひ活用してください。

ファン付き作業着に関するよくある質問

ファン付き作業着は暑さ対策として人気ですが、購入前や使用中に「どれくらい使えるのか」「長持ちさせるにはどうすればよいのか」といった疑問を持つ方は多いです。ここでは耐用年数や寿命を延ばすための工夫をまとめました。

● ファン付き作業着の事故はある?

2021年には、アーク溶接の火花がファンから侵入し、内部の肌着に着火して重度の火傷を負う災害が発生しました。取扱説明書では火気作業時に金属製フィルターの装着が指示されていますが、当時は未使用でした。火花の侵入を完全に防ぐことはできないため、難燃性の肌着を選び、リスクアセスメントを徹底するなど、多重の安全対策が欠かせません。
引用:労働新聞社「【スポット】ファン付き作業服 正しい使用を 溶接火花で重症火傷 動画で注意呼び掛ける/東京・中央労基署」/中央労働基準監督署「火気取り扱い作業におけるファン付き作業服の適正な使用について」

● ファン付き作業着の耐用年数はどれくらい?

ファン付き作業着のバッテリーはおおよそ2〜3年が平均寿命です。ただし使用頻度や環境、バッテリーの取り扱い方によって前後します。毎日長時間使う場合は消耗が早まりやすい点に注意してください。

● ファン付き作業着の寿命を延ばす方法は?

バッテリーの寿命を延ばしてファン付き作業着を長く使うためには、取扱説明書の推奨方法に従い、過充電や高温環境を避けましょう。使用しない季節は涼しく乾燥した場所で保管し、直射日光を避けることも大切です。

まとめ

ファン付き作業着が効かないと感じる原因としては、サイズの不一致や着用方法、吸気口の塞がり、汗が出ていない状態、バッテリーの劣化などが挙げられます。

こうした問題を放置したままでは冷却効果を得られません。ファン付き作業着の効果に限界を感じる場合は、他の冷却アイテムや補助装備に頼る必要があります。

暑さに負けず、安全に作業を続けるためにも、いま一度ご自身の装備を見直してみてください。

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発信者

シグマックス・MEDIAID事務局

シグマックス社員が仕事の中で得た知識から、知っておくと嬉しい・役立つ情報を、生活者の視点から発信しています。

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