2025.08.01 最終更新日: 2025.12.02

炎天下での作業で役立つファン付き作業着ですが、現場によっては使えないケースがあります。
「せっかく購入したのに使えなかった…」と後悔するのを防ぐために、作業環境に適した冷却アイテムの特徴を知っておくことが重要です。
本記事では、ファン付き作業着の基本構造や、着用が制限される現場の具体例を紹介します。
「安全に涼しく働きたい」「夏の現場作業を快適にしたい」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
ファン付き作業着は、外気を取り込んで衣服内に風を循環させ、汗を効率よく蒸発させることで体温の上昇を抑える仕組みです。
涼しさを感じる理由は「気化熱」にあります。風によって汗が乾くとき、体表の熱が奪われるため、ひんやりとした感覚が得られます。
構造を大きく分けると以下の3つです。
● ウェア本体:風の通り道を確保するゆったりした形状で、内部に送風経路を備える
● ファンユニット:腰や脇などに設置し、外気を取り込んで送風する装置
● バッテリー:充電式で数時間駆動、風量の調整機能がある機種も多い
稼働時間はバッテリーの性能によって変わります。風量のモードを選択できるものが多く、強風モードでは半日ほどでバッテリーが切れる場合があります。
また、外気温が高すぎる環境では取り込む風もぬるくなり、期待したほどの冷却効果が得られないこともあるため、使用時には注意が必要です。
ファン付き作業着は便利な冷却アイテムですが、すべての作業現場で使用できるわけではありません。
実際には、安全上の理由から着用を制限・禁止している会社も多く、状況に応じた判断が必要です。
以下のような環境では、ファン付き作業着の使用が避けられる傾向にあります。
● 粉じん・有害物質が舞う現場
● 化学物質・有害ガスがある現場
● 狭い空間・密閉空間
● 火気・高温作業現場
解体工事やセメント作業など、粉じんが大量に発生する現場では、ファン付き作業着の使用に注意が必要です。作業着のファンが空気とともに微細な粒子を吸い込むことで、肌への付着や呼吸器への刺激を引き起こすおそれがあります。
かゆみや咳など軽度の症状にとどまらず、吸入量が多くなると長期的な健康被害につながる可能性も否定できません。
また、粉じんは静電気と反応して火花の原因になるため、爆発リスクを避ける目的で使用が禁止される場合もあります。
塗装工場や化学プラントなど、溶剤や化学薬品を取り扱う現場では、ファン付き作業着の使用が重大なリスクにつながる場合があります。
外気とともに有害ガスを服の中へ取り込んでしまう危険性があり、中毒症状や酸欠状態を引き起こすおそれがあるためです。
また、化学薬品を扱う作業環境では、防毒マスクや化学防護服の着用が義務付けられていて、ファン付き作業着を着用できないケースも多いです。
タンクの内部やトンネル工事の現場など、空気が滞留しやすい閉鎖空間では、ファン付き作業着が十分な効果を発揮しません。
外気を取り込んで風を循環させる構造のため、換気が不十分な環境では取り込む風そのものが熱気や汚染された空気になりやすくなります。
また、酸素濃度が低い密閉空間では、ファンの送風によって体感的に息苦しさが増し、酸欠リスクを高める危険性もあります。
このような現場で熱中症対策を行うには、ファン付き作業着ではなく、送気式マスクや排気換気装置など、環境制御を前提とした専用設備の導入が必要です。
溶接作業や製鉄所など、火花や高温にさらされる現場では、ファン付き作業着の使用が重大な危険を伴います。
ファンが火花を吸い込んで服の内部に引き込むと、生地が発火したり溶けたりするリスクが高まります。とくにポリエステルなどの化学繊維は熱で溶けやすく、一瞬で焦げたり穴が空いたりするでしょう。
加えて、バッテリーやケーブルなどの電気部品が高温にさらされると、性能が低下したりショート・発火を引き起こしたりする危険性もあります。
「職場・設備に応じた熱中症対策に有効な手段とは? 屋根の遮熱方法から空調効率の改善までを解説」の記事へ
ファン付き作業着は、現場によっては使えないこと以外にも以下のデメリットがあります。
● ファンの音や振動がある
● ファンの位置によっては邪魔になる
● ふくらみが作業の妨げになることがある
● 効果が感じられない場合もある
ファン付き作業着は、作動中にモーター音が常に発生します。機械音が耳に残りやすく、オフィスでの軽作業や接客を伴う業務ではファンの駆動音が周囲に影響することもあるでしょう。
また、ファンが回転することで生じる微細な振動が、不快感や注意力の低下につながることもあります。
とくに静かな空間で作業していると、「モーター音が響いてうるさい」と感じやすいです。このような状態が長時間続くとストレスが蓄積し、かえって作業効率を下げる結果につながる場合もあります。
ファン付き作業着のファンは、取り付け位置によっては動作の妨げになることがあります。
腰ファンタイプは座った際にシートと干渉しやすく、重機や車の運転中に違和感を覚える方が少なくありません。一方、サイドファン(脇)タイプは、工具ベルトやフルハーネスの安全帯とぶつかることがあります。
「しゃがんだ瞬間にベルトがファンに当たってしまう」といった状況が続くと、動きにくさやファンの破損につながるリスクも生じます。
ファン付き作業着は服の中に風を取り込み循環させる構造なので、電源を入れるとどうしてもふくらんでしまい、そのふくらみが作業の妨げになることがあります。
狭い場所での作業や多くの動作を必要とする作業では、作業効率に影響を及ぼす場合もあるでしょう。
また、長袖タイプや半袖タイプは、肩や腕の動きが制限されて窮屈に感じられることがあります。
外気温が極端に高い現場や、湿度がこもった環境では、ファン付き作業着の冷却効果を十分に感じられない場合があります。
ファンが取り込む風自体が熱を帯びて、気化熱による冷却がうまく機能しないためです。
たとえば、真夏のアスファルト舗装現場では、風そのものが熱風になり、身体の表面に熱気がまとわりつくだけになることもあります。
そのような環境では他の冷却グッズを併用する必要があります。詳しい原因と改善方法については以下の記事で解説しています。
「ファン付き作業着が「効かない」と感じる理由とは?効果を引き出す方法と代替策まで徹底解説」の記事へ
粉じんや有害ガスが舞う環境、火気を扱う現場などではファン付き作業着を安全に使えません。そのような現場でも熱中症を防ぐためには、風を使わない冷却装備が役立ちます。ここでは代表的な代替アイテムを紹介します。
アイスベストは、ポケットに入れた保冷剤で身体を直接冷やす仕組みです。
冷凍ジェルパックを使用するタイプは手軽でコストもかからず、凍らせて交換することで繰り返し利用できます。ただし、冷却の持続時間は比較的短く、真夏の屋外作業では1〜2時間ほどで効果が薄れる場合もあります。
一方、PCM(相変化素材)を採用したタイプは、一定の温度で吸熱や放熱を繰り返す性質があり、冷たさを保冷剤よりも保てる点が特徴です。いずれも電源を必要としないため、動作音がなく故障リスクも低いです。
水冷ベストは、内部のチューブに冷水を循環させて身体を冷やす仕組みです。冷却効果が広範囲で、外気温や湿度の影響を受けにくい点が特徴です。
一方で、水タンクやポンプを背負う構造のため、装着時に重さを感じやすく、作業中の負担になる可能性があります。また、準備や片付けに時間がかかることや、チューブからの水漏れリスクがある点もデメリットとして挙げられます。
ペルチェプレート式冷却ベストは、「ペルチェ素子」と呼ばれる半導体部品を利用して身体を冷やす仕組みです。電流を流すと素子の片側が冷たくなり、反対側が熱を持つ性質を活かして、背中や脇の下などの体幹部を効率的に冷却します。
スイッチを入れればすぐに冷たさを感じられ、冷却の強さを段階的に調整できるため、即効性と操作性に優れています。
一方で、電力を使って冷却するためバッテリーの消耗が早く、長時間の使用には予備バッテリーの携行が必要です。
さらに、冷却範囲が狭いため全身をカバーするものではなく、冷えすぎを防ぐためには温度設定にも注意が必要です。
準備はバッテリーの充電のみ。酷暑でも5時間冷感が持続するペルチェ×水冷式の「速・軽・快」な冷却服。
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日本シグマックスが開発した「アイシングギア ベスト2」は、ペルチェ素子で冷やした水を循環させるハイブリッド冷却方式を採用しています。
背中のユニットで冷水を生成し、インナーベスト内部の冷却パッドに循環させることで、身体の広範囲をバランスよく冷却します。ベスト本体には高いフィット性を持つ伸縮素材を採用し、作業中に身体を動かしても冷却パッドがズレにくい構造です。
持続時間は約5時間で、気温が35℃を超えるような過酷な環境でも冷却効果を維持できるのが特徴です。さらに、普段のユニフォームを着られるセパレート構造で、現場に応じた柔軟な着用スタイルが選べます。
粉じんや湿気の影響を受けにくく、ファン付き作業着では効果を発揮しにくい現場にも対応可能です。ただし、耐火性能は備えていないため、溶接作業や火花が飛ぶ高温環境での使用は避けましょう。
一方で、バッテリーを使用するため再充電が必要となり、エネルギー消費や環境負荷が伴います。その点、アイスベストなど電力源を必要としない「再利用可能装備」は、環境負荷が小さいという利点があります。用途や環境に応じて、エネルギー効率や持続性も含めて比較検討することが重要です。
ファン付き作業着の基本構造や使えない現場の具体例、さらに代替となる冷却アイテムについて解説しました。
粉じん・有害ガス・火気など、作業環境によっては事故の原因につながるリスクがあります。「夏の現場を少しでも快適にしたい」と感じている方は、自分の作業内容や周囲の環境に合わせた装備選びが重要です。
また、導入を検討する際には価格・ランニングコスト・耐用年数・利用対象者を比較すると判断しやすくなります。以下を参考にしてください。
| 装備 | 価格レンジ | バッテリー・保冷剤・モーター等の寿命 | 向いている人 | 不向きな人 |
|---|---|---|---|---|
| ファン付き作業着 | 1~2万円 | バッテリー:2~3年 | 屋外で作業する人 | 粉じん、火気のある現場で作業する人 |
| アイス(保冷剤/PCM)ベスト | 5千円~2万円 | 保冷剤:2~3年 | 短時間の作業をする人 | 長時間の作業をする人 |
| 水冷ベスト | 5千円~2万円 | モーター:500~600時間 バッテリー:2~3年 |
屋外作業をする人 | 軽快さを重視する人 |
| ペルチェプレート式冷却ベスト | 5千円~3.5万円 | バッテリー:2~3年 | 即効性を求める人 | 長時間の作業をする人 |
| アイシングギア ベスト2 | 15万9,500円 | バッテリー:2~3年 | 高温環境で働く従業員がいる企業担当者 | 低予算の個人 |
初期コストがかかる装備も、法人向けの補助金を活用すれば導入しやすくなります。明日の作業にすぐ活かせるよう、自分に合った対策を見つけてください。
「メディエイド アイシングギア ベスト2」は、ペルチェにより冷却された水がベストに内蔵されたパッド内を循環し、人体を快適な温度に保つ水冷式の冷却服です。
当社独自の特許取得済のアイシング技術(※)で、タンクレスながらも広範囲かつ効率的に人体を冷却し、着用した人が快適と感じる温度管理と、作業性・可動性の両立を実現しています。
医療機器やサポーター製品で培った技術を詰め込んだ、日本シグマックスこだわりの製品です。(※熱交換装置およびウェア 第7576853号)
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シグマックス社員が仕事の中で得た知識から、知っておくと嬉しい・役立つ情報を、生活者の視点から発信しています。
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※1:㈱日本能率協会総合研究所調べ。2021~2024年度メーカー出荷額ベース
※2:㈱日本能率協会総合研究所調べ。2020〜2024年度メーカー出荷枚数ベース