2025.07.08
気温が上がる時期になると「従業員の熱中症が心配」「水分や塩分の支給だけで十分なのか不安」と感じる方も多いでしょう。
実は、暑熱対策を単なる現場の備えではなく、福利厚生の一環として制度化する企業が増えています。背景にあるのは、作業効率や従業員満足度の低下、そして法的リスクや人材離れといった深刻な課題です。
2025年6月1日より改正労働安全衛生規則が施行され、企業は熱中症対策を講じる義務を負うことになりました。熱中症リスクがある作業において適切な予防措置を講じる必要があり、対策を講じない場合は罰則が科される可能性があります。
一方で、熱中症対策を講じたことが認められた場合、その費用は経費として認められ、税務上の優遇措置を受けることもできます。
暑熱対策を福利厚生として取り入れるべき理由は次の3つです。
● 「働きやすい職場」をつくる基盤になる
● 求職者へのアピールができる
● 暑熱対策を怠ると法的リスクや損害賠償につながる
それぞれ詳しく解説します。
暑熱対策は働きやすさを支える職場環境の土台です。
働きやすい職場づくりには、熱中症への対策を含めた日常環境の整備が欠かせません。健康を守れる安心感や快適さがあってこそ、従業員は心身ともに余裕を持って働けます。
炎天下での作業がある職場でも、休憩所があると、会社が自分たちに配慮してくれているという安心感が生まれるでしょう。
結果的に、従業員のモチベーション向上につながり、企業全体の生産性にも良い影響を与えます。
暑熱対策を社内制度として位置づけ、働きやすい会社づくりの基盤として積極的に取り入れることが大切です。
暑熱対策は、採用活動における有効なアピールポイントとなります。
近年の求職者は給与や勤務時間といった条件面だけでなく、職場環境の快適さや健康への配慮も重視しています。暑さ対策がしっかりしている会社は、「人を思いやる企業」として好印象を持たれやすく、応募の後押しにもつながります。
具体的な取り組みを採用サイトで紹介すると、企業の姿勢がより伝わるでしょう。
「職場の暑さ対策が整備できている企業=信頼できる会社」という認識を得るためにも、福利厚生の一部として明示することが重要です。
暑熱対策の不備は企業にとって重大な法的リスクを招くため、責任を持って取り組むべき経営課題です。
特に2025年6月1日からは、労働安全衛生規則の一部改正により、熱中症対策が罰則付きで義務化されています。
対象となるのは、WBGT(暑さ指数)28以上または気温31℃以上の環境下で、1時間以上または1日4時間を超える作業を行う職場です。該当する事業者は以下のような対応が義務となります。
● 熱中症が疑われる場合の報告体制の整備と作業者への周知
● 作業からの離脱・冷却・必要に応じた医療機関受診の実施手順を作成・周知
● 緊急連絡網・搬送先病院の情報をあらかじめ整備
違反があった場合、是正勧告のほか労働安全衛生法第119条に基づき6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
暑熱対策を怠った場合の代表的なリスクは以下の通りです。
リスク | 想定される影響 |
---|---|
労働安全衛生法違反 | ・高温環境を放置した場合、行政から是正勧告される ・懲役または罰金が科される可能性あり |
安全配慮義務違反 | 会社の熱中症対策が不十分だった場合、訴訟に繋がる可能性あり |
熱中症による労災認定 | 入院・通院・休職が発生すると、労災補償と損害賠償を求められる可能性あり |
近年では「熱中症=労災」という認識が強まり、企業の責任がより厳しく問われる傾向にあります。したがって、熱中症対策と労災防止の両面から対応することが不可欠です。
具体的な法的対策や企業の対応ポイントについては、下記の記事で詳しく解説しています。
「熱中症による労災リスクと企業の責任|法的対策ガイド」の記事へ
福利厚生に取り入れやすく、実際の現場でも導入されている5つの暑熱&熱中症対策は以下のとおりです。
● 暑さ対策グッズの導入
● 休憩スペースの確保・整備
● 水分・塩分補給支援
● 健康管理支援
● 食事補助
それぞれ詳しく解説します。
熱中症リスクへの備えとして有効なのが、従業員の身体を直接守る暑さ対策グッズの支給です。
製造業や建築業では、従業員の業務に使用される空調服やファン付き作業着は、福利厚生費として計上できます。また、従業員の健康維持のために提供する熱中症対策の消耗品も福利厚生費として認められます。
暑さ対策グッズ | 特徴 |
---|---|
アイシング ギア ベスト2 | 体を広範囲に冷却する構造で、35℃以上の酷暑でも冷却効果持続。医療技術を応用した最新冷却ベスト。 |
ファン付きウェア | 内蔵ファンで衣服内に風を循環させて体を冷却。汗の蒸発を促すので クールダウン効果を得やすい。 |
遮熱ヘルメットカバー | ヘルメットに装着して直射日光を遮る。頭部の温度上昇を防ぎ、熱中症リスクを軽減。 |
ネッククーラー | 首元の太い血管を冷やすことで、体温を効率よく下げる。電動・保冷剤タイプなど種類も豊富。 |
冷却スプレー・冷感タオル | 手軽に使える携帯型グッズ。現場間の移動や休憩中のクールダウンに便利。 |
このように、環境に応じてしっかりと効果が得られるものを活用することが重要です。
優れた暑さ対策グッズがあっても、こまめな休憩がなければ熱中症は防げないため、「安心して涼める場所」が職場にあることが大切です。
快適な休憩スペースをつくるための工夫は以下のとおりです。
● 氷、冷たいおしぼり、シャワーなどの身体を適度に冷やせる設備を設ける
● ミストファンやエアコンを整備
● 直射日光を遮るパーテーションやブラインドを設置
これら熱中症対策に必要な機器や設備の導入費用は、熱中症対策の設備投資費として認められることがあります。
熱中症の最大の引き金は脱水と塩分不足であるため、両方をしっかり補える支援が必要です。
企業で実施しやすい補給支援の例は以下のとおりです。
● 塩タブレットや経口補水液の配布
● アクエリアスなどのスポーツドリンクを常備・無料提供
● 自販機の飲料を会社補助で安くする
● ウォーターサーバーや冷水機を共用スペースに設置
熱中症対策の水分補給として支給する飲み物は福利厚生費として計上できる他、ウォーターサーバーや冷水機は設備投資費として計上できる可能性があります。
「体調が悪くなってから対処」では遅すぎるため、日々の体調変化に早く気づき、無理をさせない仕組みが必要です。
現場で実施されている健康管理支援は以下のような内容です。
● 出勤前に体温・体調をチェックする簡易シートの記入
● 体調が悪いときは早退できる柔軟なルール整備
● 保健師や産業医と定期的に面談できる制度の導入
予防意識が根づけば、熱中症だけでなく従業員全体の健康づくりにもつながります。まずは、小さな取り組みから始めてみてください。
また、熱中症予防対策の指導者や監督者の人件費、現場の環境管理用の温湿度計などは、熱中症を未然に防ぐために必要な現場管理費として計上できます。
暑い日は食欲が落ちてしまう方がいるため、栄養バランスを考えた食事補助は働く方のコンディション維持に役立ちます。
福利厚生として取り入れられている食事支援の例は以下のとおりです。
支援例 | 狙い・効果 |
---|---|
朝食の無料提供 | 朝からしっかり体力をつけられ、仕事に集中しやすくなる |
冷たいメニューの提供 | 食欲がない日でも食べやすく、栄養が摂れる |
塩分を意識したメニュー | 汗で失われる水分と塩分を同時に補給できる |
暑熱対策や熱中症対策の一環として重要な役割を果たすため、飲み物だけでなく食事補助の導入も検討してみてください。
また、研修費を活用し、食事や運動による熱中症予防の研修、熱中症についての知識や応急処置の研修などを実施するのも一手です。
福利厚生費は従業員全員が対象となる必要があり、特定の従業員に支給する場合は給与扱いになる可能性があります。また、支給額は社会通念上の妥当な範囲内である必要があり、過度に高額な場合は経費として認められない可能性があります。
熱中症対策に伴う支出を経費計上する際は、あらかじめ導入前に担当税理士へ確認・相談をしてください。
企業によっては、現場の実情に合った暑熱対策を福利厚生として導入し、実際に業績や定着率の改善につなげています。
各業界で実践されている対策事例は以下のとおりです。
● 建設業|WBGT指数活用&冷却設備導入
● 警備業|休憩所確保&ファン付きウエア支給
● 製造業|朝食無料提供&ミストファン設置
● 運輸業|スポットクーラー設置&熱中症キット準備
それぞれ詳しく解説します。
対策例 | 狙い |
---|---|
WBGT指数をデジタル表示 | 作業中でもリアルタイムで確認でき、休憩の目安に使える |
スポットクーラー・ミストファン設置 | 局所的に気温を下げて、熱のこもりを防ぐ |
塩バナナの配布 | 塩分とエネルギーを一度に補給できる |
プレハブ休憩所に冷房完備 | クールダウンできる場所を現場に近接して設置 |
参考:厚生労働省「導入しやすい熱中症対策事例紹介 鉄建建設株式会社(建設業)」
WBGT指数(暑さの感じ方を示す指標)を使った温度管理と冷却設備の併用事例です。
現場責任者がWBGT値を確認しながら、「今日は1時間に1回、10分休憩」と作業計画を柔軟に調整しているのが特徴です。
対策例 | 狙い |
---|---|
作業車を休憩所として活用 | 駐車スペースがある現場では車内を冷房付きの休憩所にできる |
ファン付きウェアの支給 | 高温環境下でも体温上昇を抑制し、熱中症リスクを軽減 |
冷凍ドリンク・塩飴を常備 | こまめな水分・塩分補給を後押し |
麦わら素材の庇(ひさし)をヘルメットに装着 | 直射日光を防ぎ、首元や顔への熱を和らげる |
参考:厚生労働省「導入しやすい熱中症対策事例紹介 株式会社セシム(警備業)」
現場の特性に応じて、休憩場所の工夫と装備の支給を組み合わせた事例です。
休憩所の確保が困難でも、作業車を活用して休憩環境をつくり出している点がポイントです。
対策例 | 狙い |
---|---|
朝食を無料で提供(夏季) | 空腹による体力低下を防ぎ、熱中症リスクを軽減 |
ミストファンを高温エリアに設置 | WBGT値(暑さ指数)を局所的に下げ、作業環境を改善 |
朝食セミナーの開催 | 食習慣の改善を後押しし、欠食を減らす |
参考:厚生労働省「導入しやすい熱中症対策事例紹介 株式会社クボタ 阪神工場(製造業)」
朝食の欠食が熱中症リスクにつながるという調査結果をもとに、「食事+冷却」の2軸で対策を進めた事例です。
夏季は朝食を無料配布するなど、社員が出勤時から元気に働けるような環境づくりが実施されています。
対策内容 | 狙い |
---|---|
休憩場所にスポットクーラーを設置 | 作業場所の近くに休憩場所を設置し涼しい環境で随時休憩ができる |
凍らせたペットボトル飲料を常備 | 体を冷やしながら、効率よく水分補給ができる |
熱中症キット(冷却剤・塩飴・経口補水液)を配備 | 体調急変時の応急対応が可能になり安心感を確保 |
参考:厚生労働省「熱中症対策事例紹介 -企業別取組事例(令和3年度)-」
責任者がWBGT値を測りながら巡視し、こまめな冷却と補給ができるように整備されています。
暑熱対策を福利厚生として導入するだけでは、人が集まり定着する職場づくりは十分とは言えません。
高温環境で働く現場では、生産性向上の観点からも、勤務環境そのものを見直すことが欠かせない視点です。
人材の確保と定着率アップを同時に実現するために、福利厚生とあわせて取り組みたい工夫を2つ紹介します。
夏場は体への負担が大きくなるため、労働時間そのものを見直すだけでも熱中症リスクを効果的に下げられます。
以下のような工夫が、暑さによる体調不良の予防に役立ちます。
● 朝の涼しいうちに作業を前倒しする早朝シフト
● 直射日光が強くなる14時~15時を避け、長めの休憩を挟むスケジュール
● 暑さのピークを避け、夕方以降に再開する「分割勤務制」
熱中症対策は従業員満足度(ES)の向上にも直結します。職場全体の定着率を高めるための具体策は、下記の記事で詳しく紹介しています。
「【離職率改善対策】従業員満足度(ES)を高める熱中症対策9選!夏の職場環境改革で人材定着へ」の記事へ
WBGT(暑さ指数)を活用すると、科学的根拠に基づいて休憩タイミングや作業計画を立てられます。
たとえば以下のような現場運用が挙げられます。
● WBGT(暑さ指数)が28を超えたら「1時間に1回、10分以上の休憩」を実施
● 携帯型のWBGT計を現場ごとに配布し、リアルタイムで計測
● 朝礼時に当日のWBGT値を共有し、作業内容やシフトを柔軟に調整
暑さの見える化を取り入れることで熱中症の予防につながります。
また、万が一の事態に備えておくことも重要です。緊急時の応急処置や労災対応については、下記の記事で詳しく解説しています。
「【企業向け】熱中症対応マニュアル|緊急時の手順・応急処置・労災対応まで徹底解説」の記事へ
働きやすさを整えることは人材の確保にもつながるため、今ある制度にプラスして現場に合った対策を取り入れて生産性の底上げを図ると良いでしょう。
たとえば、導入しやすいのは以下のような取り組みです。
● 暑さ対策グッズの支給
● 冷房付きの休憩所整備
● 朝食・塩分補給などの食事支援
● WBGTの活用による作業時間の見直し
福利厚生に暑熱対策を加えて、社員が安心して働ける環境を整えてください。
暑さ対策グッズはさまざまなものがありますが、35℃以上など危険な現場で作業する場合は、冷却効果が非常に重要です。そういった場合に活躍するのが、メディエイドアイシングギア ベスト2です。
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