近年、夏季の猛暑が深刻化し、企業における熱中症対策の重要性が高まっています。特に屋外作業や高温環境下での労働が避けられない業種では、従業員の安全と健康を守るための対策が急務となっています。
そんな中、注目を集めているのが「冷却ベスト」です。冷却ベストは、着用者の体感温度を低減したり、熱中症のリスクを軽減したりするアイテムとして、多くの企業で導入が進んでいます。
この記事では、企業向けの冷却ベストの選び方や比較について詳しく解説します。
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国内企業が注目している冷却ベストには、保冷剤タイプや保冷剤式水冷タイプ、ペルチェプレート式、送風式などの種類があります。それぞれの特徴について確認し、自社に適切な冷却ベストを選びましょう。
保冷剤ベストは、冷凍庫で冷やした保冷剤を、ベストのポケットに差し込んで使用する冷却ベストです。
最大の特徴は、装着直後から即座に冷却効果を得られる点です。保冷剤は取り外し可能で、使用後は再度冷凍して繰り返し使用できるため、ランニングコストを抑えられるのも魅力でしょう。
保冷剤ベストのメリットは、電源不要で使用できること、比較的安価であること、そして冷却効果が高いことです。特に、短時間の屋外作業や高温環境下での一時的な作業に適しています。その他にも、冷房が使用できない現場や、粉塵や埃が多くファンを回せない場所、また、防爆対策が必要な環境でも使用が可能です。保冷剤ベストは1着あたりのコストも低いため、導入しやすい点もメリットです。
さらに、送風式ベストと併用すれば冷たい風を循環できるため、暑さが過酷な環境下でも作業がしやすくなるでしょう。
一方、デメリットとしては、保冷剤の冷却効果が時間とともに低下すること、保冷剤の重さによる着用者の負担、そして使用前に保冷剤を冷凍する手間が挙げられます。また、保冷剤が直接肌に触れると、冷えすぎて不快に感じる人もいるでしょう。
このように保冷剤ベストは、即効性と高い冷却効果が求められる現場で重宝されますが、長時間の連続使用には向いていない点には注意が必要です。
保冷剤式水冷ベストは、ベスト内側に張り巡らされたチューブに、保冷剤で冷やされた冷水を循環させることで冷却効果を得る仕組みの製品です。バッテリーと接続された小型のポンプを使用して冷却水を循環させるため、保冷剤ベストより長い時間冷却が得られ、且つ保冷剤を直接肌にあてるよりも適度な冷却が得られることが最大の特徴です。
保冷剤式水冷ベストのメリットは、保冷剤の量によっては比較的長い時間冷却効果が得られること、水の循環具合の調整によって冷却強度を調整できること、体にフィットしやすいことです。比較的長い時間、首元や背中、脇をひんやりと冷やすことができるため、屋外作業や高温環境下での継続的な作業に適しています。
その他にも、冷房が使用できない食品製造の現場や、粉塵や埃が多くファンを回せない場所でも使用できる点もメリットです。
デメリットとしては、保冷剤ベスト同様で、保冷剤の冷却効果が時間とともに低下すること、保冷剤の手配や入れ替えの手間が挙げられます。また、水漏れのリスクがあるため、精密機器を扱う作業には不向きな場合があります。
このように、保冷剤式水冷ベストは、安定した冷却効果がある一方で、持続時間や保冷剤の手配・入れ替えの手間がある点に注意が必要です。
ペルチェプレート式冷却ベストは、エアコン等に使用されている半導体素子の「ペルチェ素子」を用いたベストで、ペルチェベストとも呼ばれています。
ペルチェプレートがベストに取り付けられており、バッテリーと接続し冷却させたペルチェプレートを、直接首元や脇下に当てることで効果的に冷感を得ます。
ペルチェプレート式冷却ベストのメリットは、高い機動性、使用場所の選択肢の多さ、比較的長時間の使用が可能なことです。特に、移動の多い作業や様々な環境下での作業に適しています。
また、保冷剤ベストのように保冷剤の交換が必要ない点も大きなメリットです。
一方デメリットとしては、ペルチェプレートの設置位置が決まっているため微細な調整がしにくく、冷感が得られる箇所が限られることが挙げられます。その他に、冷却温度に慣れて冷たさを感じにくくなったり、冷却ベストの上から通気性の悪い服を着用すると排気した熱がこもり、冷却効果が弱まったりする点もデメリットです。
このように、ペルチェプレート式冷却ベストは、長時間冷感が得られ、保冷剤を交換する手間を省けますが、個々によって冷却効果・箇所が変わる点には注意が必要でしょう。
送風式冷却ベストは、ベストに取り付けられたファンによって外気を取り込み、体に風を送ることで汗の蒸発を促進し、冷却効果を得る仕組みの冷却服です。
送風式冷却ベストのメリットは、比較的低コストで導入できること、軽量で着用者の負担が少ないこと、使用方法が簡単なことが挙げられます。特に、軽作業や比較的涼しい環境下での作業に適している冷却ベストです。
しかし、デメリットとしては、他の冷却ベストに比べて冷却効果が低いこと、高温多湿環境下では温風が送られてしまうため効果が限定的になること、ファンの音が気になる場合があることが挙げられます。また、ファンの風が直接肌に当たることで不快に感じる人もいます。
さらに、ファンの大きさによっては効果が感じられなかったり、粉塵や埃が多い現場では使用出来なかったりといったデメリットもあるでしょう。
このように、送風式冷却ベストは、コストを抑えつつ基本的な暑さ対策を行いたい場合に選択されますが、その冷却効果や使用場所には限界があることを理解した上で導入を検討する必要があります。
企業が冷却ベストを導入する大きな理由は、熱中症の発生を防ぐためです。企業は、従業員の健康と安全を守る責務があり、適切な熱中症対策が求められています。
近年、職場における熱中症の問題が深刻化しており、労働災害として認定されるケースが増加しています。厚生労働省が発表した「令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」によると、2023年に職場で熱中症を発症した労働者は1,106 人に上り、うち31人が死亡しています。これらの数字は、企業にとって無視できない重大な問題です。
熱中症が労災として認定されるためには、業務に起因して発症したことが認められる必要があります。具体的には、高温多湿な環境下での作業、激しい肉体労働、適切な休憩や水分補給の機会が不足していたことなど、熱中症予防や対策の有無が考慮されます。労災として認定されると、企業は治療費や休業補償などの費用負担を強いられるだけでなく、社会的信用の低下にもつながる可能性があるでしょう。
さらに、企業には従業員の安全と健康を守る義務があり、適切な熱中症対策を講じていなかった場合、安全配慮義務違反として法的責任を問われるリスクもあります。このような状況下で、冷却ベストの導入は、企業が積極的に熱中症対策に取り組んでいることを示し、労災発生のリスクを軽減する一助となります。
企業は、熱中症が単なる体調不良ではなく、重大な労働災害につながる可能性があることを認識し、適切な対策を講じる必要があるのです。
冷却ベストを導入することで、企業は従業員の安全を効果的に守ることができます。冷却ベストに期待される効果は、以下のとおりです。
● 体温上昇を抑え、熱中症を予防する
● 発汗を抑え、水分補給の負担を軽減する
● 快適な作業環境を確保し、健康被害を防ぐ
● エアコンなどの大型設備導入と異なり、比較的短時間で導入が可能
● 製品によっては、エアコンの電気代等を比較してランニングコストが抑えられる
まず、体温上昇を抑えることは、熱中症を予防する効果があります。人体は通常、発汗と皮膚表面からの熱放散によって体温を調節していますが、高温環境下ではこのメカニズムが十分に機能しなくなります。冷却ベストは直接体を冷やすことで、この体温調節を助け、熱中症のリスク軽減が期待できます。
また、過度の発汗は脱水症状を引き起こし、熱中症のリスクが高まるでしょう。。体温上昇を抑え、結果として発汗量が減少することは、水分補給の負担軽減につながります。作業中の水分補給の頻度を減らすことができれば、作業効率の向上にもつながります。
さらに、冷却ベストは快適な作業環境を確保し、健康被害を防ぐ効果があります。暑熱環境下での作業は、熱中症発生リスクだけでなく、疲労の蓄積や集中力の低下、判断力の鈍化などをもたらします。これらは作業ミスや事故のリスクを高める要因となるでしょう。冷却ベストを着用することで、作業者の快適性が向上し、健康被害のリスクが軽減します。
エアコンなどの大型設備は、配管工事等が必要であり、導入するまでに長い時間がかかりますが、冷却ベストは必要数を購入するだけで暑熱対策が可能です。そのため、急に対策が必要な状況に迫られたとしても早期に対策を打つことができます。また、エアコンの電気代と比較して、ランニングコストが安いことも魅力のひとつでしょう。
このように冷却ベストの導入は、従業員の安全を守る手段として、企業の安全管理体制の強化につながります。
企業が冷却ベストを導入する理由は多岐にわたりますが、主に以下の点が挙げられます。
● 熱中症対策で従業員の健康を守る
● 作業効率を向上し、生産性が高まる
● 労働環境を改善し、企業の評価向上につながる
● 法規制に対応し、適切な安全対策になる
まずは、熱中症から従業員を守るための対策である点が理由です。熱中症は生命に関わる深刻な問題であり、企業は従業員の安全を確保する義務があります。冷却ベストの導入は、この義務を果たすための具体的な対策です。
また、従業員の作業効率を向上し、生産性をアップさせる効果があります。暑熱環境下では作業者の集中力や判断力が低下し、作業効率が落ちてしまいます。冷却ベストを着用することで、作業者の快適性が向上し、結果として生産性の向上につながります。
さらに、労働環境が改善され、企業の評価向上につながる点も大きな理由です。従業員の健康と安全を重視する姿勢は、企業の社会的責任の観点からも高く評価されます。また、良好な労働環境は従業員の満足度を高め、人材の確保や定着率の向上にも寄与するでしょう。
そして、労働安全衛生法では、事業者に対して従業員の安全と健康を確保するための措置を講じることを義務付けています、企業の冷却ベスト導入は、この法的要件を満たすための具体的で適切な安全対策となります。
このように冷却ベストの導入は、従業員の健康と安全を守り、企業の生産性向上や社会的評価の向上、法的リスクの軽減など多面的な効果をもたらします。
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冷却ベストは、保冷剤や水冷方式、バッテリーなどのさまざまな種類があります。ただし、作業環境によっては選択すべき冷却ベストは異なるでしょう。
ここでは、自社に適した冷却ベストを選ぶために、「種類」「通気性」「機能性」の3つの視点で重要なポイントを解説します。
冷却ベストを種類で選ぶ際は、作業環境と使用目的に合わせて最適なタイプを選択することが大切です。
保冷剤タイプや保冷剤式水冷タイプ、ペルチェプレート式、送風式の4つのタイプについて、以下を参考にしてください。
冷却ベストの種類 | 特徴・選ぶポイント |
---|---|
保冷剤タイプ | ・メリットは、即効性が高いこと ・デメリットは、保冷剤の冷却効果が時間とともに低下することや冷凍の手間があること ・短時間の屋外作業に適している点が特徴 |
保冷剤式水冷タイプ | ・メリットは、保冷剤の量によっては比較的長い時間冷感が得られること ・デメリットは、冷却効果は時間と共に低下する、保冷剤の手配と入れ替えの手間があること ・高温な環境や熱気が滞留する屋内環境などに適している点が特徴 |
ペルチェプレート式 | ・メリットは、使用場所を選ばず、比較的長時間の使用が可能なこと ・デメリットは、冷却範囲が限定的であること ・移動が多い作業環境に適している点が特徴 |
送風式 | ・メリットは、低コストで導入でき、軽量で着用者の負担が少ないこと ・デメリットは、冷却効果の低さや、粉塵や埃の多い現場では使用できないこと ・軽作業や比較的涼しい環境下での作業に適している点が特徴 |
私たち日本シグマックスは、作業中に身体を冷却できる冷却服「メディエイド アイシングギア ベスト」で、酷暑環境で働く人の安全を守ります。
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企業の作業内容や環境を十分に考慮し、それぞれのタイプの特徴を理解した上で選択することが重要です。
冷却ベストを機能性で選ぶ場合は、作業環境や使用目的に合わせて必要な機能を見極めることが大切です。
例えば、長時間の屋外作業が多い場合は、直射日光や天候の変化に対応できるように、UVカット機能や防水性能が重要になります。高温環境下での作業が多い場合は、冷却効果の持続時間や冷却温度が重要です。
また、安全性の観点から、反射材や蛍光色による高視認性など現場で規定された服装の機能を阻害せず着用できるものが良いでしょう。さらに、安全帯との併用や狭所作業など、作業に適した設計になっているかも重要なポイントです。
モバイルバッテリーを電源とする冷却ベストを選ぶ場合は、バッテリーの持続時間や交換の容易さ、充電時間なども考慮する必要があります。
このように、快適に作業ができる機能性が備わっていること、作業員の安全面を考えたデザインであることに注目して、自社に最適な冷却ベストを選びましょう。
冷却ベストを選ぶ場合、種類や素材、機能性などの他にも気になる点は企業によってさまざまでしょう。ここでは、冷却ベストの選び方に関してよくある質問をまとめています。
冷却ベストの冷却効果は、タイプや使用環境によって異なりますが、冷却ベストは衣服内温度や皮膚温を低下させる効果があります。例えば、胸部の皮膚温を約1℃、上腕部の皮膚温を約2℃減少させる効果が報告されています。
送風式やペルチェプレート式は、使用環境や使用状況によって冷感が得にくい場合があるものの、一日使用できるものが多くあります。
ただし、使用方法や環境条件によって冷却効果の感じ方は異なるため、実際の使用感は個人によって変わる可能性があります。
また、保冷剤タイプの場合は特に、冷却効果が時間とともに徐々に低下するため、長時間の使用では効果が薄れていくことに注意が必要です。
冷却効果と持続時間は、冷却ベストの種類や着用者の感じ方によって異なる点を考慮して、適切な製品を選びましょう。
バッテリーの持続時間は、冷却ベストのタイプ、冷却強度の設定や環境温度、着用者の体温などの要因によって変動します。高温環境下や高出力モードでの使用では、バッテリーの消耗が早くなるでしょう。また、バッテリーの劣化により、使用回数が増えるにつれて持続時間が短くなる可能性もあります。
注意が必要なのは、付属するバッテリーに性能差がある場合があり、中にはバッテリーの持ち時間が短く、想定よりも早くバッテリーが切れてしまう製品もあります。
購入する際は、製品のスペックを必ず確認しましょう。
冷却ベストの洗濯とメンテナンスは、製品の耐久性と性能を維持するために重要です。一般的なガイドラインとしては、以下の点に注意しましょう。
まず、電気部品(バッテリー、ファン、モーター)は必ず取り外してから洗濯します。電機部品以外にも洗濯できない部品がある場合もあるため注意が必要です。洗濯の際は手洗いが推奨されますが、製品によっては洗濯機使用も可能です。
洗濯後は、直射日光を避けて日陰で陰干しします。なお、使える洗剤に条件があったり、電機部品等のお手入れ方法が定められていたりしますので、必ず製品の取扱説明書で確認してください。
定期的に各部品の点検を行い、損傷がないか確認することも重要です。使用頻度にもよりますが、一般的に週1回程度のメンテナンスを想定しておきましょう。
冷却ベストは、企業における熱中症対策の重要なツールとして注目を集めています。
保冷剤タイプや水冷式、ペルチェプレート式、送風式など、様々な種類があり、それぞれに機能性や冷却効果などに特徴があります。企業は作業環境や使用目的に応じて、種類、コスト、機能性などを総合的に判断し、最適なタイプを選択することが重要です。
熱中症対策による従業員の安全確保や作業効率の向上、労働環境の改善、法規制への対応などの側面から、冷却ベストを導入するメリットは大きいといえます。
冷却ベストを効果的に活用しつつ、包括的な熱中症対策を実施し、従業員の安全と健康を守り、企業の生産性向上と社会的責任を果たしましょう。
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※1:㈱日本能率協会総合研究所調べ。2023年度メーカー出荷額ベース
※2:㈱日本能率協会総合研究所調べ。2020~2023年度メーカー出荷枚数ベース